よく次のような質問を受けます。
「文字や図表などが見えにくいのであれば、拡大コピーで大きくすれば良いのではないか?いまは、どこの学校にも、コピー機があるし、必要に応じて拡大の倍率を変えてあげれば簡単ではないか。教科書会社も、1.4倍、2倍、3倍の教科書を作ることができるのではないか?」
確かに、拡大すれば文字や図表は大きくなります。
例えば、10ポイントの文字を、1.4倍に拡大すると14ポイント、2倍なならば20ポイントの大きさになります。
視力0.1前後の弱視児童生徒の場合、見やすく分かりやすい文字は、22~26ポイント程度の大きさが必要であるといわれています。
すると、「拡大教科書」は、原本教科書の2倍程度の大きさにする必要があります。
大きさを2倍にするということは、面積では4倍になります。
いま、検定教科書の大きさはB5判が主体になっています。
これが4倍になるということは、新聞紙大の大きさになります。
これでは、机の上に広げることも持ち運びすることも困難です。
また、単純な拡大は、文字の大きさだけではなく、文字間、行間等の全てにおいて拡大されますので、余白の部分が多くなったり、図表等の説明文を探すのに時間がかかったりして、文章の読解や図表の確認などに困難を生することもあります。
さらに、教科書は、ほとんどがカラー化されており、カラフルな色彩が使われてあります。
色彩によって興味や関心を引き、認識能力を高める工夫がなされていますが、弱視児童生徒の中には、細かい色識別が困難な者もおります。
中間色が使われているとその識別が困難になり、学習意欲も向上しにくくなりかねません。
また、一般には、図表の下にその説明が書かれていますが、弱視児童生徒の場合、図表が先にくると、その図表を理解するのに時間がかかります。
これに対して、先に説明文があると、その説明文によって何の図表であるのか予測が立てられます。
教科書は、学習を理解する手段として必要であり、児童生徒にとって分かりやすいものですが、弱視児童生徒にとっては、必ずしも分かりやすいものとはいえません。
単に拡大すれば良いというものではなく、弱視児童生徒のニーズに合わせて編集・拡大することが必要といえます。
以上、国立特殊教育総合研究所「プロジェクト研究報告書 C-43 弱視児の視覚特性を踏まえた拡大教材に関する調査研究」より、許可をいただき抜粋しました。