交通事故の過失割合の決まり方と事例、注意点

    事故現場での話合い

    2019年5月8日、滋賀県大津市の交差点で直進車と右折車が衝突する交通事故が起こり、近くの交差点で信号待ちをしていた園児二人が亡くなりました。このような交通事故を起こしてしまった場合、双方の過失についてはどのように決まるのでしょうか?この記事では過失割合の決まり方や事例、また過失認定の際の注意点などについて解説しています。

    過失割合とは

    自動車同士の事故や歩行者または自転車との事故が起こる原因として、車の運転者や歩行者、自転車の注意不足が挙げられます。例えばわき見運転をしていたり考え事をしていて信号を見落としていたり、優先道路を認識せずに交差点に進入すれば運転者の注意不足となりますし、歩行者や自転車であっても左右を確認せずに道路に飛び出せば過失を問われることになります。

    事故のイラスト

    交通事故が起こった際にどちらにどれくらいの責任があるのか、不注意の程度はどれくらいだったのかを数字で表したのが「過失割合」です。過失割合は一般的に「30:70」「100:0」のように合計が100になる形で割合が示されますが、第3者がいる事故の場合は「30:20:70」のように合計が100を超える形で示されることもあります。

    この過失割合に応じて事故で生じた損害額をどちらがどれくらい負担するのかが決定されます。そのため過失割合の決定については慎重に行う必要があります。

    過失割合の決まり方

    実際に過失割合はどのように決定されるのでしょうか?ほとんどの交通事故では過去の裁判(判例)を基に作成された「過失割合の事例」を参考にして、双方の損害保険会社の担当者同士の話合いで決定されます。事故当事者に対する聴取や警察によって作成された事故見分書、ドライブレコーダー、目撃者の証言などによってどのような事故が起こったのか検証し、過失割合の事例と照らし合わせて過失割合を決定していきます。具体的な事例は下で解説しています。

    • ・過去の交通事故例による決定(損保会社の担当者による話合い)
    • ・裁判による決定

    もし一方が自動車保険に加入していなかったり双方が加入していない場合は当事者同士の話合いや、弁護士に依頼して代理人として話合いを行ってもらうことになります。過失割合について納得がいかない場合は裁判によって決定されることもありますが、弁護士費用がかかったり保険金が下りるまで時間がかかったりなどのデメリットもあるので注意しておきましょう。

    修正要素

    過失割合のおおまかな数字については「典型例」から当てはまる事故の類型を見つけ、基準となる過失割合が決まります。例えば交差点(青信号)における直進車と右折車の事故の場合、直進車の過失割合は20、右折車の過失割合は80となります。右折車の方の過失割合が大きくなるのは、青信号の交差点において直進車が優先で通行できることとなっているため、右折車の注意不足が事故の大きな原因として考えられるためです。

    直進車と右折車の典型例

    しかしながら交通事故はさまざまな要素が絡み合っているため、同様の事故をすべて同じ過失割合で決まってしまうのは不公平ですし納得がいかない当事者も出てきます。そこで事故ごとに「修正要素」を判定して、典型例で定められている過失割合をベースに増減されることになります。例えば上の図解で示した直進車が法定速度よりも20km以上スピードを上げて走行していたとします。この場合はスピードを出していた直進車の過失が重いと判断され、ベースの過失割合20:80からプラスマイナス10されて30:70と変化します。

    修正要素による増減

    修正要素も典型例と同様に過失割合の増減の値が定められています。他にも夜間のヘッドライトの点灯や走行中の携帯電話の操作、右左折時におけるウィンカーの出し忘れなども修正要素と挙げられており、万が一の事故の際に損害賠償額にも大きく影響してくるので交通事故を予防するという点でも日ごろから安全運転を心がけることが大切です。

    修正要素(対歩行者、対自転車)増減割合概要
    夜間マイナス5 ~ 20%夜間は車やバイクのヘッドライトで車両を発見しやすいため、歩行者の過失割合がプラスされます
    幹線道路マイナス5%車どおりが多い幹線道路では歩行者や自転車の運転者も一般道に比べて注意義務があるとされます
    児童、高齢者など5 ~ 10%児童や高齢者の横断、すれ違いに関してはいつも以上に注意する必要があるとされるため
    後退、ふらふら歩き5 ~ 20%横断歩道上をふらふらと歩いたり意味もなく後退すると歩行者の過失が問われることがあります
    修正要素(車対車)増減割合概要
    著しい過失10%15~30km未満のスピード違反や酒気帯び運転、わき見運転などの運転者の過失がある場合
    重過失20%30km以上のスピード違反や酒酔い運転、煽り運転、無免許運転など重大な過失がある場合
    合図遅れ、合図なし5 ~ 20%右左折時のウィンカー出し遅れ、停車時のハザードランプ点灯無しの場合も
    徐行なし10%徐行指示の区間で徐行を行わなかった側に対して過失割合がプラスされます
    既右折10%すでに交差点に進入している右折車がいる場合、ブレーキによる減速や停車で衝突を避けられた場合

    気を付けなければいけないポイントとして、歩行者や自転車であっても注意義務があるという点です。特に夜間の場合は歩行者や自転車の方に過失割合がプラスされるので注意する必要があります。反対に歩行者が児童や高齢者の場合は判断能力が低いためによりいっそうの注意をして運転しないといけないため、事故が起こった際には過失割合がプラスされます。

    車対車の事故の場合においては基本的に道路交通法のルールを守っていれば過失割合がプラスされることはありません。ただし、青信号で直進車と右折車の事故のような場合ではどちらがより重い判断ミスをしたのかが問われることになります。例えば黄色信号での右直事故の場合、すでに右折車が交差点に入っていると認められれば直進車の方に過失がプラスされることもあるので、交差点に進入する場合は慎重に車を運転することが大切です。

    過失割合の事例

    自動車同士や対歩行者、高速道路上でよく起こる交通事故ではどれくらいの過失割合になるのか、過去の事例をもとに図解で紹介します。

    自動車同士の事故

    直進車同士の交差点における衝突事故
    同じ道路幅で信号がない交差点における衝突事故の場合、左側の直進車が40、右側の直進車が60という過失割合になります。これは道路交通法で左側の車が優先して走行できる事になっているためで、左側を走っていた直進車の過失が10%減り、反対に右側の直進車の過失が10%増えることとなります。

    停車車両への後ろからの追突事故
    停車可の道路上で停車していた車両に、後ろから走行してきた車両が追突事故を起こした場合、停車車両の0、後ろから追突した車両は100という過失割合になります。ただし、停車禁止場所で停車していたり、歩道側に車を寄せて停車していなかったり、ハザードランプの点灯を忘れていたりすると停止していた車両側にも過失が認められることもあります。

    自動車と歩行者の事故

    青信号で横断中の歩行者との衝突事故
    青信号で横断歩道を渡っている歩行者に車が衝突した場合は0:100ですべての過失を自動車の運転者が負うことになります。もし赤信号であった場合は歩行者の過失が大きいと判断されて歩行者が70、自動車が30という過失割合になります。歩行者もスマホを見ながら歩いていて赤信号を見落としていたりするとさらに過失が大きくなるので注意しましょう。

    高速道路上の事故

    高速道路上で車線変更時の衝突事故
    高速道路上でよく起こる交通事故として車線変更時の衝突事故が挙げられます。図解では追い越し車線への車線変更時に、後ろから走行してきた車と衝突した状態を示しています。この場合の過失割合は後続車が20、車線変更を行った車が80となっています。これは右側後方に対する注意不足から車線変更を行った車の過失が大きいと判断されます。

    この場合でもウィンカーを出し忘れていたり合図が遅れると過失が増え、反対に追越車線を走っていた車が法定速度のスピードを大きく超過して走行していたのであればこちらの過失が大きくなります。

    FPコメント

    一般道では車線変更時の基本過失割合は30:70となっているのですが、高速道路上ではより速いスピードで走行しているため一般道よりも大きな注意義務が発生していると考えられています。

    過失認定の際の注意点

    交通事故が起こると以上のように「典型例」と「修正要素」の組み合わせによって過失割合が決まります。実際には双方の損害保険会社の担当者同士が過去の例をもとに話し合いで過失割合を決め、その後で事故の当事者に連絡が来るという流れになります。

    納得がいかない場合の対処法

    提示された過失割合に納得がいかない場合も多くあります。このような場合には保険会社の担当者に再交渉してもらうように依頼することもできますが、こちらに有利となるような証拠が新しく発見されないと過失割合を変更させることが難しくなります。そのためドライブレコーダーの映像をもう一度よく見てみたり、事故現場近くの防犯カメラの映像を集めてきたりするなど修正要素として利用できる証拠を集める必要があります。

    • ・こちらが有利となる証拠を集める
    • ・専門の弁護士に依頼する

    しかしながら、事故で入院や通院が必要になり自分自身で調査を行うことができないこともあります。そんな時には交通事故専門の弁護士に依頼すると事故について改めて調査してくれたり、相手方の担当者と示談交渉を行ってくれるというメリットがあります。弁護士に依頼すると着手金などの費用がかかるデメリットもありますが、任意保険に付帯できる「弁護士費用特約」を付けておくと調査や裁判にかかった弁護士費用を最大で数百万円まで負担してくれます。

    過失ゼロは損保会社が交渉を代行できない

    もう1つ注意しなければいけない点として、こちらの過失がゼロとなる0:100の過失割合の場合、保険会社の担当者が交渉を代行できないということが挙げられます。こちらの過失が無いのであれば保険会社が保険金を支払う必要がなくなり、事故相手と交渉する必要も無くなるからです。

    しかしながら相手方の保険会社の担当者と示談交渉を進めて損害賠償額などについて交渉する必要がありますし、ケガで入院中であったり業務上で事故に巻き込まれた場合などは精神的にも大きな負担を強いられてしまうことになります。このような場合でも弁護士費用特約をつけておけば弁護士が代わりに相手方の保険会社と示談交渉を行ってくれます。

    FPコメント

    実際に事故に遭遇すると過失割合や損害補償額について納得できない人も多いようです。大きなケガを負うケースなどに備えて、弁護士費用特約を付帯させておくと安心です。

    過失相殺について

    過失相殺とは過失割合に基づいて損害額から差し引かれて賠償額が決定されるというものです。過失ゼロの場合は損害額のすべてを相手方に請求することができますが、被害者側に過失がある場合ならその割合に応じて賠償額が減額されます。

    例えば歩行者が赤信号で横断歩道を歩行していた際に車にはねられ後遺障害を負い、3,000万円の損害額になったとします。赤信号で横断していれば歩行者の過失は70%となり、3,000万円から70%が減額されて900万円の損害補償額となります。また相手方の車種がスポーツカーや高級車だった場合では、こちらの過失割合が低いのにも関わらず高額な修理費用を請求されることもあります。

    対人賠償、対物賠償においても賠償額が数億円にも上る判例もあり、たとえこちらの過失が10%であっても数千万円の賠償額を請求される可能性もあります。損害額が大きくなるような事故に備えて対人・対物補償は無制限、人身傷害保険も5,000万円以上の補償が受けられるようにしておくようにしておきましょう。


    最後に管理人から1つだけお願いがあります。自動車保険を販売してきた経験の中で最も悲しいのが死亡事故です。保険金という形でしか償えないという運転手のもどかしさに近いような反省の気持ちと、「お金なんてどうでもいい」という被害者ご家族のお言葉の狭間で、担当者として何ができるのだろうかと自問することも多々ありました。

    滋賀の事故の一報を聞いた時にも1児の子を持つ父親として胸が締め付けられる想いがしました。自動車保険は万が一の事故の際に民事上の責任をカバーするためのものです。しかしながら、大切な人を失った被害者のご家族にとってかけがえのない存在をお金で替えることは到底できないことですし、加害者となったドライバーは一生をかけて罪を背負い自分自身を責め続けることになります。

    これ以上悲しい交通事故を引き起こさないためにも、自分自身を苦しめることが無いようにするためにも、自動車やバイクを運転する際には「安全運転」について今一度考えていただけたらと思います。

    参考リンク
    ・弁護士ドットコム「過失割合に納得いかない法律相談
    ・三井ダイレクト損保「過失相殺とは
    ・「判例タイムズ

    協力、監修
    佐藤真一@FP

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